この記事は Haskell Advent Calendar 2020 20日目の記事です.
TL; DR#
タイトル
問題設定#
ユースケース層とサーヴァ層が存在する Web アプリケーションを考える.サーヴァ層はユースケース層を呼び出すことができるが,ユースケース層はサーヴァ層について無知でなければならない.
+----------------+
| server layer |
+-------+--------+
| depends on
+-------v--------+
| use case layer |
+----------------+
このようなアプリケーションのAPI リクエストハンドラにおいて,複数のユースケースを合成して呼び出すケースを例に挙げ,それぞれのユースケースが投げうるエラーをうまく扱う open union を用いたテクニックを紹介する.
今回は extensible effects を用いてユースケース層を記述するが,特に extensible effects に固有の話というわけではない.tagless final でも,ExceptT
や単なる Either
でも同じテクニックが使えるだろう.
extensible effects のライブラリとして extensible-skeleton
を用いる.
Error
effect#
ユースケース層はエラーを投げることができるものとする.下準備として,エラーを投げるための Error
effect を定義しておく.
ユースケース#
引数で受け取った ID に対応する Talent
エンティティを返すユースケースである findTalent
というユースケースがあるとしよう.ただし,対応する Talent
が見付からなかった場合には TalentNotFound
エラーを送出する.
findTalent
とよく似た findTag
ユースケースも準備しておく.
サーヴァ層からユースケースを呼び出す#
これら2つのユースケースを合成し,サーヴァ層から呼び出す場面に焦点を当てる.
ここで Handler
は,API のリクエストハンドラを書くための言語であり,runUseCase
は,ユースケース記述言語から Handler
言語への解釈を与える関数とする.ただし,Error
effect は Either
として解釈する.
しかし,これはうまくいかない.findTalent
が投げうるエラーの型は TalentNotFound
である一方,findTag
が投げうるエラーの型は TagNotFound
であり,これらが一致しないからだ.これは本質的には (e
と e'
が異なる型であるときに) Either e
と Either e'
が組み合わせられない問題と同質である.
open union#
そもそも一般に,あるユースケースが投げたいエラーが1種類で事足りるとは限らない.ユースケースによっては,あらかじめ宣言した複数の種類のエラーのうち,状況に応じてどれかひとつを投げたい,という場合もあるだろう.このような欲求を満たすため,まずは投げるエラーを open union に埋め込むことにしよう.今回は既に extensible
package を使っているので,extensible
が提供する extensible sum を使うことにする.
また,findTag
ユースケースにも同様の変更を加える.
投げられうるエラーを量化する#
エラーを open union で扱うだけでは,エラーの型が一致しないという当初の問題が解消されるわけではない. OneOf '[TalentNotFound]
と OneOf '[TagNotFound]
は異なるので当然である.そこで,OneOf
の引数を「少なくとも TalentNotFound
を含む任意のリスト」という風に量化する.
新たな型変数 errors
を導入し,エラーの型として OneOf errors
を用いるように変更を加えた.
findTag
が投げうるエラーについても同様に,少なくとも TagNotFound
を含む任意のリストという風に量化してやる.
こうすれば,handleErrors
関数は以下のように実装できる.ここにおいて,findTalent
および findTag
のシグネチャ中の型変数 errors
はいずれも '[TagNotFound, TalentNotFound]
に解決される.
handleErrors
:: OneOf '[TagNotFound, TalentNotFound]
-> Handler Response
handleErrors = match
$ Match (\(Identity (TagNotFound _)) -> throw NotFound)
<: Match (\(Identity (TalentNotFound _)) -> throw NotFound)
<: nil
要件が変更され,合成されたユースケースの最後で呼び出されていた createTagging
が TagAlreadyAttachedToTalent
エラーや TooManyTagsAttachedToTalent
エラーを投げるようになったとしよう.その場合でも,パターンマッチを増やすだけで対応できるため,拡張性にも富んでいる.
handleErrors
:: OneOf '[TagNotFound, TalentNotFound, TagAlreadyAttachedToTalent, TooManyTagsAttachedToTalent]
-> Handler Response
handleErrors = match
$ Match (\(Identity (TagNotFound _)) -> throw NotFound)
<: Match (\(Identity (TalentNotFound _)) -> throw NotFound)
<: Match (\(Identity (TagAlreadyAttachedToTalent _)) -> pure Response { ok = True }) -- return 2xx for idempotent requests
<: Match (\(Identity (TooManyTagsAttachedToTalent _)) -> throw Conflict)
<: nil
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この記事は HERP 勤務中に書かれた。
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コード#
主要な部分のみを抜粋した不完全なコードである.GHC 言語拡張や,細かい関数・データ型の定義などは適宜補ってほしい.また,本文中で最初に定義した Error
effect は,量化された open union をエラーとして投げることを前提した UseCaseError
effect で置き換えている.